導入

映画を観るとき、多くの人はまず「ストーリー」に注目すると思います。

でも、そのストーリーを成立させているのは、脚本という設計図です。

この記事では、脚本家・ライターのニコ・トスカーニ氏による名作映画の作劇術の分析をもとに、名作の面白さを脚本の構造や技術から読み解いていきます。

ストーリーとは少し違う角度から、映画を見る視点を整理してみたいと思います。

映画の「脚本」と小説の「執筆」はどう違うのか

小説を書く技術と、脚本を書く技術は、似ているようで実はまったく別のものです。

小説を映画化する際には、必ず「脚色」という作業が必要になります。

小説はページ数に大きな制約がありませんが、映画には尺という時間の制約があります。そのため、時間を短縮したり、描写を簡略化したりする工夫が求められます。

実際、小説原作の映画で、原作者自身が脚本を書き、アカデミー賞を受賞した例もあります。

  • ウィリアム・ピーター・ブラッティ
  • マリオ・プーゾ
  • マイケル・ブレイク
  • ジョン・アーヴィング

この4人は、小説家でありながら、自作を脚本という別の形式に落とし込むことに成功した書き手です。

『ショーシャンクの空に』に見る「正攻法の脚色」

脚色の具体例として、1994年公開の『ショーシャンクの空に』を見てみます。

監督・脚本を務めたのはフランク・ダラボンです。

原作は、スティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」という小説です。

主演はティム・ロビンスとモーガン・フリーマンです。

この作品の脚色で特徴的なのは、原作小説のプロットをほぼ変更していない点です。

ただ、細部の変更や描写の簡略化によって、映画としてのテンポと劇的な物語性を生み出しています。

原作の魅力を大きく変えることなく、映画の尺に合わせて合理的に整理する。この手法は、脚色のひとつの「正攻法」と言えると思います。

脚本家によって変わる作劇術

脚本には、書き手ごとに異なるスタイルがあります。

たとえば、アレクサンダー・ペインとアーロン・ソーキンでは、作劇の手法が大きく違います。

アレクサンダー・ペインは、セリフとト書きのバランスを意識した書き方をします。

一方、アーロン・ソーキンは、セリフの量が多いスタイルで知られています。

同じ「脚本」という仕事でも、誰が書くかによって、物語の作り方はまったく違ってきます。

ストーリーだけでなく、こうした脚本の書き方そのものにも、名作を読み解くヒントがあると思います。

名作の脚本を見るときに注目したいポイント

ここまでの内容を踏まえると、脚本に注目する際にいくつかの視点が見えてきます。

まず、原作小説からどのように映画用に脚色されているか。

次に、映画の尺に合わせて、どの部分が短縮・簡略化されているか。

それから、セリフとト書きがどのようなバランスで使われているか。

そして、脚本家によって作劇のスタイルが異なること。

こうした視点を持つと、映画を見る際に「脚本家」や「脚色(Screenplay)」というクレジットにも、自然と目が向くようになると思います。

注意点・補足

ここでいくつか補足しておきたいことがあります。

作品の具体的な内容や結末に関わる詳細については、ネタバレに配慮して書いています。

また、今回の内容は、5本の映画を紹介する構成の一部です。ほかの作品の詳細については、参考URLで確認してもらう必要があります。

この記事で紹介している内容には、執筆者個人の見解や専門的な分析が含まれていることも、あらためて伝えておきます。

ちなみに、『ショーシャンクの空に』と同じ監督・脚本家による代表作としては、『グリーンマイル』が挙げられます。

まとめ

名作の魅力は、ストーリーだけでなく、脚本の構造や作劇術からも見ることができます。

『ショーシャンクの空に』は、原作のプロットを活かしながら、映画向けに合理的に整理する脚色の手法を示す例でした。

小説と脚本には、それぞれ異なる技術が必要です。

そして、脚本家によって作劇のスタイルが違うことも見てきました。

これから映画を見るときは、ストーリーだけでなく、脚本家や脚色にも少し目を向けてみると、また違った面白さが見えてくると思います。