「水と空気から石油を作る。」
昔なら完全にSFだったこの技術が、今、日本で現実になっている。
しかもその舞台の1つが、神奈川県・横浜。
地下から掘り出すしかなかった石油を、人類が“工場で作る”時代が始まろうとしている。
現在、世界中で「e-fuel(合成燃料)」と呼ばれる新しい燃料の研究が加速している。
その中心技術が、“水”と“二酸化炭素”から液体燃料を合成する技術だ。
さらに日本では、実際に横浜で実証プラントが稼働し、人工的に燃料を作ることに成功している。
今回は、この未来のエネルギー技術について詳しく解説していく。
石油は「掘るもの」という常識
現在の世界は石油によって動いている。
- 車
- 飛行機
- 船
- 工場
- 発電
- プラスチック
現代社会のほぼ全てに石油が関わっている。
しかし問題も多い。
石油には限界がある
石油は地球上のどこにでもあるわけではない。
中東など特定地域に偏っているため、
- 戦争
- 政治問題
- 国際情勢
によって価格が大きく変動する。
さらに、石油を燃やせば大量の二酸化炭素が発生し、地球温暖化の原因にもなる。
そこで世界が注目し始めたのが、「人工的に燃料を作る」という考え方だった。
水と二酸化炭素から燃料を作る仕組み
人工石油の原料になるのは、主に次の3つ。
- 水
- 二酸化炭素
- 電気
まず水から「水素」を取り出す。
水から水素を取り出す
水はH2O。
つまり、水素と酸素でできている。
ここで使われるのが「水の電気分解」という技術。
2H2O→2H2+O2
電気を流すことで、
- 水素
- 酸素
に分離できる。
この“水素”が人工燃料の重要な材料になる。
二酸化炭素と水素を合成する
次に、水素とCO2を化学反応させる。
すると「炭化水素」が生成できる。
炭化水素とは、ガソリンや軽油など石油系燃料の元になる物質だ。
代表的なのがメタノール合成。
CO2+3H2→CH3OH+H2O
このメタノールをさらに加工すると、
- ガソリン
- 軽油
- ジェット燃料
などへ変換できる。
つまり理論上は、
「空気中のCO2」
+
「水」
から燃料を作れることになる。
そして日本は実際に成功している
ここが重要。
これはもう“未来の研究”だけではない。
実際に日本では、水と二酸化炭素から燃料を作ることに成功している。
横浜で始まった“人工石油工場”
神奈川県横浜市にある ENEOS の中央技術研究所では、合成燃料「e-fuel」の実証プラントが完成している。
この施設では、
- CO2回収
- 水素生成
- 合成反応
- 燃料化
までを一貫して行っている。
つまり、“人工的な石油製造工場”がすでに動いている状態。
まさに現代版の「石油精製工場」だ。
何がすごいのか
本当に凄いのは、“液体燃料”として完成している点。
作られているのは、
- ガソリン
- 軽油
- ジェット燃料
などの元になる合成燃料。
しかも既存のエンジンでも使用可能。
つまり、
「今の車や飛行機をそのまま使える可能性がある」
ということ。
EVとは違う方向の未来
最近はEV化が進んでいる。
しかし飛行機や大型船は、巨大バッテリーだけでは難しいと言われている。
その理由は単純。
「重すぎる」から。
一方、液体燃料はエネルギー密度が非常に高い。
- 保存しやすい
- 運びやすい
- 長距離輸送向き
という圧倒的な強みがある。
そのため世界では、
「EV」
だけではなく、
「人工燃料」
にも大きな期待が集まっている。
実際に車を走らせる計画も
ENEOSは実証実験として、
- 車両
- バス
- エンジン機器
などへの供給も進めている。
つまり、もう研究室だけの話ではない。
“走る燃料”として現実に動き始めている。
ただし課題も大きい
もちろん、まだ完璧ではない。
最大の問題は「コスト」
現在、合成燃料は非常に高価。
大量の電力を必要とするため、普通のガソリンより大幅にコストが高い。
現時点では、1L数百円レベルとも言われている。
そのため、
- 大量生産
- 発電効率向上
- 再生可能エネルギー活用
などが重要になる。
もし普及したら世界は変わる
この技術が本格普及すれば、世界のエネルギー構造は大きく変わる可能性がある。
資源がない国でも燃料を作れる
日本は資源が少ない国。
石油の多くを海外輸入に頼っている。
しかし、もし国内で、
- 水
- 空気中のCO2
- 電力
から燃料を作れるようになれば、エネルギー安全保障が大きく変わる。
これは国家レベルで重要な話。
空気から燃料を作る未来
現在は「DAC(Direct Air Capture)」という技術も進化している。
これは空気中から直接CO2を回収する技術。
つまり将来的には、
空気
↓
CO2回収
↓
水素と合成
↓
燃料化
という流れが現実になる可能性がある。
まるでSF映画のようだが、実際に世界はそこへ向かっている。
石油を「掘る時代」から「作る時代」へ
人類はこれまで、
- 木を燃やし
- 石炭を掘り
- 石油を採掘してきた
しかし次の時代では、“燃料そのものを工場で合成する”ようになるかもしれない。
そしてその第一歩は、すでに横浜で始まっている。
未来では、
「石油会社」
ではなく、
「燃料生成会社」
が世界を動かしている可能性すらある。
