NASA発表ー火星で「古代生命の痕跡」を発見ー

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米航空宇宙局(NASA)は10日、火星探査車パーサヴィアランスが昨年採取した岩石サンプルから古代生命の痕跡とみられる物質を発見したと発表した。この研究成果は英科学誌ネイチャーに掲載され、火星における生命探査において重要な前進を示すものとなった。

「サファイア・キャニオン」サンプルの発見

この画期的な発見は、「チェヤバ・フォールズ」と呼ばれる岩石から採取された「サファイア・キャニオン」と名付けられたサンプルによるもの。パーサヴィアランスは2024年7月、ジェゼロクレーター内のかつて水が流れていた古代の河床で、この矢尻型の岩石を発見した。

NASA代理長官のショーン・ダフィー氏は記者会見で「これまで火星で発見された中で最も明確な生命の痕跡である可能性が非常に高い」と述べた。しかし研究チームは「生命そのものではなく、生命の兆候だ」として、さらなる研究の必要性を強調している。

「ヒョウの斑点」が示す生命の可能性

岩石表面に見つかった特徴的な斑点模様は、研究者らによって「ヒョウの斑点」と名付けられた。この斑点は、ビビアナイト(水和リン酸鉄)とグレイガイト(硫化鉄)という2つの鉱物で構成されており、地球上では微生物の代謝活動によって形成されることが知られている。

ストーニーブルック大学のジョエル・フロヴィッツ教授は「ブライトエンジェル層で発見した化合物の組み合わせは、微生物の代謝にとって豊富なエネルギー源となった可能性がある」と説明した。

火星サンプルリターン計画の重要性

この発見により、現在パーサヴィアランスが保管している27個の岩石コアサンプルの価値がさらに高まった。NASAと欧州宇宙機関(ESA)は2030年代にこれらのサンプルを地球に持ち帰る計画を進めており、地球の実験室でより詳細な分析を行うことで、生命の存在を決定的に証明できる可能性がある。

しかし、この重要なミッションは予算削減の脅威にさらされている。現政権の予算案では、NASA科学部門の予算を47%削減し、火星サンプルリターンを含む41のミッションを中止する計画が含まれている。

研究チームは、今回の発見が火星における生命の決定的な証拠ではないものの、これまでで最も有力な手がかりであることを認めている。地球外生命体の存在という人類最大の謎の一つに、科学者たちは一歩近づいたといえるだろう。

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