米連邦高裁がトランプ関税の大半を違法と判断

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米連邦控訴裁判所は29日、トランプ政権が発動した「相互関税」や中国、カナダ、メキシコへの追加関税について、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大統領権限の逸脱として違法と判断した。7対4の僅差で下されたこの判決により、トランプ政権の包括的な関税政策は重大な法的挫折を迎えた。

判決の詳細と影響範囲

連邦巡回区控訴裁判所は、トランプ大統領がIEEPAを根拠に課した関税の大半を「法に反する」と認定し、5月の一審判断を支持した。判決では「法律は大統領に宣言された国家緊急事態に対応する様々な権限を与えているが、関税や税の賦課権限は明示的に含まれていない」と指摘した。

一方で、通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税や、通商法301条に基づく対中関税は今回の判決の対象外で、引き続き有効とされている。

政権の対応と今後の展開

判決を受けトランプ大統領は自身のSNSで「全ての関税は依然として有効だ」と反発し、最高裁への上訴意向を表明した。控訴裁判所は政権に最高裁上訴の機会を与えるため、10月14日まで関税措置の効力継続を認めた。

財務長官スコット・ベッセント氏が6月に表明した労働者の日までの関税交渉完了は、この法的不確実性により困難となった。外国政府も米国との貿易協定の再評価を検討する可能性がある。

司法判断の意義

今回の判決は、トランプ政権が外交政策の中核として位置づけてきた関税が、司法による厳格な審査の対象となることを示している。特に「異常かつ特別な脅威」への対処を目的とするIEEPAが、交渉上の優位性確保のための「圧力」手段として使用することは認められないとする司法判断は、今後の大統領権限行使に重要な制約となる。

最高裁での最終的な司法判断により、米国の通商政策と大統領権限の範囲が明確化されることになる。

なぜ重要なのか

トランプ政権の中核的な経済政策である関税が司法により違法と判断されたことで、大統領の緊急権限の範囲が問われ、最高裁の判断次第では米国の貿易政策と大統領権限に重大な制約が課される可能性がある。企業の投資判断や各国との通商交渉にも深刻な影響を与える。

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